日本には5~6万のことわざがある。そのことわざの大きな特長として、内容が森羅万象に及ぶ点がある。なかでも人間にかかわることわざは多く、人体に関するものも多数ある。当然のごとく骨にかかわるものもちゃんと存在しており、数にしても優に100はある。ことわざになっている骨を分析してみると、①肯定的なもの、②否定的なもの、③中立的なものに分けられる。現代人に最も馴染みがある表現は、狭義の“ことわざ”ではないが、肯定的なニュアンスの「お骨折り」「骨がある」、あるいは、いかなる障害にも屈せずに己の信念を貫く意の「気骨がある」あたりであろうか。
さて、一般の認識では骨というと「おとなしい臓器」というイメージだろう。しかし、そうではなく、骨自体が活発に代謝しており、また、他の臓器と関わり合って、互いの恒常性を調節していることが10年ほど前からわかってきた。
あまり知られていないが、「骨はホルモンを作る臓器である」。それらには軟骨の形成に関係するBMPやオステオカルシンがある。我々は、東北大との研究などでE型コンドロイチン硫酸がオステオカルシンの産生を誘導することを明らかにした。オステオカルシンは膵臓に作用してインスリンの分泌を促し、糖代謝を制御しているのである。男性の生殖能にも関与しており、精巣に作用して男性ホルモンを増やす働きもある。これはヒトでも証明されており、すでに精巣にあるオステオカルシンの受容体も同定されている。
文献
j.Biol.Chem.,278,43229−43235(2008)
第64回日本栄養・食料学会大会講演要旨集、 3J−02a
Cell,144,796−809(2011)
骨は巨大な臓器です
2016/07/02